クロスプレイ/八月の秒針/佐東
覚えたてのシンカーの握りかたで
深く沈んでゆく
午睡
サイドハンドスローで
手渡された
ワンナウトランナー
八月二十日
野球帽のひさしの影に
そっと触れる
オーシツクツク
人差し指を
くるくる回して
レフトフライが
落ちてくる
しっかりと両手で捕球するんだ
黒い顔した父さんの白い歯が真上から囁く
蝉の羽音が
四方に散らばる
透明のランナーが
タッチアップの姿勢に入る
子犬の影が
一回だけ揺れた
センタースコアボードの大時計は
秒針を盗まれたままで
次の時報を手渡せない
ブロックの間隙をついて
劇的な八月ツーアウ
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