監視者/佐々宝砂
 
どんなに寒い夜でも
(霜夜ならばなおさらに)
窓を開けておかねばならない
あおじろい月光のもと
こっそりと育ちゆくものたちを
おれは監視する
明るい蛍光灯をつけておく限り
闇の眷属は絶滅危惧種
灯りをすべて消せ
おれは監視する
耳をそばだてる
消滅を定められながら
育ちゆくものたちを
書きとどめておくために
おれは監視する
おれの腕を切り取るがいい
おれの足を断つがいい
それでもおれは目をみひらく
おれの目をえぐりとってもいい
それでもおれはおまえを監視する
おれの皮膚細胞すべてで
おれはおまえを感じとる監視する
開け放つ窓の外に
陰鬱な朝日が顔を見せるまで
闇の眷属よ
おれの友よ同類よ
おれはおまえを監視する
戻る   Point(2)