さるすべり/八布
 
どこかでたしかに会ったことある人に
挨拶してはみたものの
結局あれは誰だったのか
日が暮れるまで思い出せなかった


減るものじゃないけれど
宙に消えた「こんにちは」が
なんだか寂しい
飛んでいった風船みたいに
消えていった僕の挨拶
今ごろは木星のあたりで
木星人の耳に届いているのか


庭には百日紅が咲いていて
散りゆくそばからまた
同じ花を咲かせている
あとから あとから 飽きもせず
与えることしか知らないように

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