トロイメライ/春日線香
雨戸を閉めきった家が並ぶ
かんかん照りの通りを行く
夏の盛りの日中
打ち水のあとも乾いた道には
猫の一匹もいない
影ですら焼き付くよう
こんな時にどこからか
トロイメライが流れてきたら
少しはいい気分になるかもしれない
雨戸の向こう
井戸の底みたいな暗がりに
親戚の人々が集い
お嬢さんがピアノを披露していたり
息をつめて演奏を聴く人々が
豪勢なお膳を囲みながら
ゆっくりと溶けていったり
庭では百日紅が
ピンクの血を流していればいい
それが物憂げに
夏を封じ込めたまま
千年も続けばいいのだけれど
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