失われた花々に対する二、三の刑罰/青土よし
その湿原の中に、彼の祖母が眠る家はあった。湿原には現在、百四十七年に一度の雨季が訪れており、雨水が五十センチほどの嵩まで溜まっていた。そのため彼は、服の裾をたくし上げて歩かねばならなかった。時刻は正午に差し掛かっていた。ただでさえ高い気温が急速に上昇していた。老齢の男には堪えた。加えて雨水の抵抗とへばりつく草のために、歩行は困難だった。男の身体は至るところから絶えず発汗し、額はしとどに濡れていた。
濃霧が立ち込め始めた。そして、またたく間に四方を取り囲んだ。前方から微かに人の気配が感じられた。気配は徐々に近づき、男の目の前にはっきりとした輪郭を浮かび上がらせた。それは若くして死んだ彼の妻だっ
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