何でもない。/吉澤 未来
『何でもない』
昔、学校の教室の中で
あった話
とある日
西日が射し込み
薄暗い教室の中を照らしていた
放課後の居残りで僕は自分の席に座っていると
君は
僕の後ろから近づき
後ろに立って
何気なく
肩を「ポン」とたたいた
君の顔も姿も、教室の匂いもほとんど覚えていないけれど
その言葉だけは覚えている
「何でもないよ」
何でもないワケはないのに
何でもないというその言葉で
伝えられ
そして
得られたものは
僕たちの一瞬の孤独と
その確認作業だったと
気付いたのは今になっ
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