店番/春日線香
 
夜からの雨は
屋根を洗って海へ抜けた
わたしは誰もいない店で
外で吠えている犬の声を聞きながら
小僧のように座っている
なにもすることがないとは
お客が来ないとは
本当にかなしいものである
祭りでもあれば
少しは店も繁盛するだろうに
みんなどこへ行ってしまったのだろう
裁縫箱は軋んで
新聞の活字はぎっしりと詰まっている
それでも留守を頼まれたのだからと
梅雨の晴れ間に
肩肘をついて待っている
ぽーん、ぽーんと
柱時計が物憂げに鳴っている
もう誰も帰ってこないのかもしれない
庭の紫陽花が
枯れて剥がれ落ちていくだけで
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