明るく短い径/木立 悟
水底につづく階段
溶け残るつらら
午後を咬むつらら
羽のしぐさ
空のひらき方
指をのばして
そっと試して
ひとつだけだよ
裏通りの声
違う人の 同じ言葉
こだまのように表をすぎる
埃は苦く
埃は白く
幾すじも互いをくぐり
空をくぐり
光のかたちのひとつが落ちて
風のなか
向かう方を見ぬまま
ただ生まれ来る方を見つめている
曇の下の曇の島
囲いのなかの囲いたち
何を何から守っているのか
乳母車の赤子は口をつぐむ
秋を梳いた鉱の鏡に
動く水と動かぬ水の境いめに
昏い柱は立ちつづけ
光の
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