どろたぼう/佐東
朝
けたたましい山羊の蹄が頭上を通過する
夕べの取引先からのメールが
全て獅子唐に変わっていた朝だ
二、三日前から不穏な空気が送電線を伝って来て
この朝の微睡みの中
それは形づいていったんだ
(最初は妻からだった、話す言葉の端々から玉葱の薄皮が見え始めたんだ。)
兎に角 朝だ
早くから取引先の人に会わなくてはならない
私は
壁紙を次から次に食い散らかす山羊どもを部屋の隅に追いやると
床いっぱいに広がっている西瓜の若芽に足を取られて体勢を崩してしまった
咄嗟にドアノブを掴む
ぐにゃりとした椎茸の傘の感触
振り返ると
かつて私のベッドと呼ばれていたものは牛になっ
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