日本橋人形町/乾 加津也
 
日比谷線はいう、秋葉原、小伝馬町、人形町、人形とは「ひとがた」、エレキテルな水平移動の装置から視神経に憑りつく駅名は、脳のどこかの襞裏で痺れ、角砂糖のように崩れ、蟻の行進に流れてゆく、投げ返してくる、一筋とおつた見返り美人の態で、どなたか、どなたか、と柳眉のまなざし、今生の謂れ、(形容しがたく)、ヲタクもAKBも発展途上の未熟の文化で、舞台は平成、上がり框にゆるりと腰かけ、人に似て人ならざるものの遺恨、仕手、浮世を霧噴く熱量は、明け暮れ無縁の東京メトロ、みなぎる胎動、その先に空(ひかり)、アンダーグラウンドで人形は問う、縫い込められた口は開かず、見様見真似で一心不乱にいずこから、次は、人形町、人形
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