書きたくても書けない、とある作家の話。/東野 遥汰
 


部屋に閉じ籠って
もう一週間は経っている
何かを書いて紙を捨てて
毎日毎日が虚弱な無限ループ


きっかけが欲しい
スイッチを探してる
早く書きたい
でも筆を取るのが怖い


通行人Aが奏でる
彼だけの人生を分析して
僕はやっぱりただのB
変哲の無いただの通行人B

予想もしない幕開けに
観客は大パニックに陥って
主役を脇に押し退けて
通行人Bによる独壇場の開演


そんな夢を見るようになって
毎日文字が書けなくなった


座標軸に浮かぶ星と星
プロットに佇むAとB
文字に起こすのが怖いだけ
思考の設計図は出来ているのに

原稿用紙が無限の升目
目は疲れて腕はくたびれて
いつの間にか机に突っ伏して


例になくあの夢を見るんだろう



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