引き潮/あとさき/佐東
 
「夕凪」

遠い昔
粉々になった水平線が
白い海鳥に姿をかえました

白い海鳥の
さいごの羽ばたきで
のばされた夕凪で
ひきよせられる
白い骨



「内緒」

わたしの脊髄には
水平線のかけらが
入ってるの

う そ



「五線譜」

浜木綿の葉の上に
浮かび上がった
みどり色のト音記号は
夕立のまあるい指先で踊りだすから
夏をかさねた水玉もようは
重い足取りで
もう夏をやめようと思ってるって
聞いた事がある



「引力」

きみの
やさしい引力にひきよせられる
わたしの人さし指は
きみのくちびるのかたちをな
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