ややあって、黄金のサックスが啓示のように暗闇を裂く。/TAT
。毎晩ここに棄てる訳じゃないのか?諦めかけた時、射竦められたように女が一人ゴミ置き場の入り口に立っていた。目が合った瞬間、睨まれた。やばい。鉢合わせた。脇の下から一気に嫌な匂いの汗が出てくる。耳たぶが急に熱くなる。ややあって、何か言ってくるかと焦ったが女店員はゴミ袋をぶら下げたまま、来た方向に消えていった。
『店長ー!』と叫びながら。
ブロック塀の向こう側からゴミ袋が降って来るのと同時にその声に貫かれた。頭から肩に直撃した袋に傷つく暇も無く、そのゴミ袋を抱えて走って逃げた。
心臓が破れそうになりながら橋の下まで帰り着いた。上半身を全部使ってゼェハァ呼吸してようやくボートに腰を降ろす。月が何
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