ややあって、黄金のサックスが啓示のように暗闇を裂く。/TAT
 
京都の賀茂川の河川敷にいるような気がする。毛布を腹まで引き上げて小麦粉袋に手を伸ばす。指にべたつく砂糖とクリームの中から今回登場するのは。月に透かす。エンゼルフレンチ?フレンチクルーラー?よく分からない。分からないなりに食ってみる。甘い。当たり前だ。五個程食ったら気持ち悪くなった。昨日も猫が来てたしそろそろ棄て時かもしれない。見つけた時は嬉しかったが二十キロもドーナツばかり食ってたら本当に本物のミスター・ドーナツになってしまう。寝よう。
 起きると雨が降っていて、橋の下から出る気が失せた。今何時なんだろう?吸いさし袋から長めの一本を見定め慎重に取ろうとするが、やはり幾らかは指が灰にまみれる。便意
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