アソコ伝 92章/花形新次
 
タマンキと弟子達が
ニコタマールの街を
歩いていると
路地から
一人の少女が
飛び出して
タマンキにぶつかりそうになった
弟子のハラグローが
咎めようとするのを
タマンキは遮られて
少女に
何故そんなに急いでいるのか
尋ねられた
少女は
「私が幼いころ、父が一旗あげてやるといって
東の方に行ったまま帰って来ません。
私は毎日路地に立って父の帰りを待っています。
私は目が見えないので、幼い頃聞いた父の声に
似た声が聞こえたら、そのあとを追って確かめて
いるのです」
と答えた
じっと聞いていたタマンキの目からは涙が溢れた
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