小さな路地の先っちょに/灰泥軽茶
肌に艶のある小母さんが暖簾を掲げている
くいっと曲がり
小さな路地に入っていくと
木のこっぱや削り粉が雑然と置かれていて
いい匂いがする銭湯のうらっかわ
すぐ右手には
古びた人気のない小さな神社
樹が二本しか生えていないけれど
木陰が私を包み
いつも立ち止まり息を吐く
そして吸うのは
少しだけ清めてもらえるからだろうか
瘤だらけの立派な樹を見上げていると
てっぺんには鳥の巣らしい枝が積まれている
ぼうっと放心して眺めていると
木の葉と私は風に揺らぎ
優しい光は緑と混じりとろり液体となって
すうっとこぼれ落ちてきては
私の額をつうっと撫でる
目を閉じ
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