死に魅せられた女の顛末/茜井ことは
 
   1

ぬくもりを知ってしまったぶんだけ
喪失は獲得よりもいつも大きい
穴を塞いだところで
爛れたままの周辺が孤独を告発する

   2

大木の幹の裂け目に光るどんぐりに
ひとりの少女が誘われて
か細い手首をそこに収めた
ところがいくら腕を挿しても
きかん坊の薬指が
獲物を奥へ奥へと押しやるので
フラストレーションは高まるばかり
追いかけっこのお終いは
少女の拘束と引き換えだ
そんな哀れで貪欲な少女を
抱きあげてくれる母親は
まだこの世にいるのだろうか

   3

一向に現れない母親の行方を知っているのは私だけですが
「母親」というものを私
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