四角い空/渡邉建志
 
空を見上げる
街に並ぶビルディングの上から
きいろい四角い看板たちが
見下ろしてくる
見上げている僕は憂鬱で

あの中に
住むことを考えてみる


  □


今日も地上の人々が
浮かない顔で看板を見上げてくる
彼らは僕がこんなところに住んでいるだなんて
知らないだろう

鉄骨と鉄板に囲まれ
見える外界は小さい四角の空だけ
雨が降ると青いごわごわしたビニールを掛けに
はしごに登る

ふたをしてしまうと
閉じられた立方体の中はめっぽう暗い
雨の音 自動車の走る音 クラクション
時々サイレンが聞こえる

それだけだ


  □


雨が降った
僕は屋上に出て 空守りさんに会いに行く
空守りさんは忙しそうにはしごに登っている
僕も違うはしごに登って 天井造りを手伝う

やあ ありがとう と空守りさんが言い
いいえ どういたしまして 僕が言う

そうしてまた僕は
暗い階段を降りていく


上のほうから雨の音


ぱしぱし、ぱしぱし





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