砂のじいさん/花形新次
子供たちが
元気に
穴を掘っていたら
砂の中から
じいさんが出てきた
ベンチに座って
エロトピアを読んでいる
俺に子供たちが知らせにきた
面倒くさかったが
大人は俺一人だったので
仕方なしに様子を見に行くと
確かにじいさんが
砂から半分顔を出していた
そして
じいさんはまだ息をしていた
俺はもう一度
砂を掛けるよう
子供たちに言った
「じいさんはここで蟻が来るのを待ってるんだよ」
子供たちは
じいさんは蟻を食べるの?とか
蟻と友達なのとか、しつこいので
ゴチャゴチャぬかすと
おまえらも埋めるぞ!と怒鳴ると
泣きながら一目散に帰って行った
残された
俺はエロトピアのページを
めくりながら
家族のこと考えろ
そっとしておくんだ
と呟いた
俺も大人になったなあ
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