名医/イナエ
見つかったところで・・・」
(あらら 話がずれていく)
「この先 どれだけもつやら
さみしいもんや」
ここで相づちは禁物だ
話は平均余命になって 「ぼつぼつ準備せな」と来る
それは聞きたくない
「血圧 まあ普通やな 何時もの薬出しとくから」
カルテを看護師さんに渡して
「じゃ」
診察終了を宣言されて
物忘れも 頭痛も診察室に置いたまま
まだぐずぐずしている耳鳴りを連れだす
金を払い 診察券を受け取って
健康になってしまったぼくは 小春日の中へ出ていく
後から看護師さんが大声で呼び止める
「お薬 持っていかな!」
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