テイク・ザ・ドラゴン/済谷川蛍
私たちは稀少なドラゴンを撮影しに行った。標高4,222mのシヴァ山は、ドラゴンの住処の一つとして世界のあらゆる教科書に記されている。この世界の大いなる神秘は市井の人々に好奇心や甘美な心象を喚起させ、崇高なる自然に対する畏敬と幾つかの宗教を産んだ。未だ多くの謎に包まれた歴史と生態に関する様々な憶測は神格化された幹を作り、様々な研究分野の枝を伸ばしていた。神話の世界にも登場するこの伝説的な生物はあらゆる権威の象徴として多くの人間たちに必要とされ利用されていたが、今日に至るまで人間を寄せ付けず山を降りることもない孤高の城主であった。ドラゴンは住処である洞窟の前の広場にて時折その姿を見ることが出来る。崖
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