夢の跡地/済谷川蛍
アパートの前に半壊した木造の2階建ての家があったが、今年の夏休み、地元から帰ったらきれいさっぱり壊されていた。なぜか残された白い西洋風のポーチが、敷地内に広がる茶色の地面と対照的だ。2対の細身の紅葉が双子のように根付いている。井戸にはロープで結界のようなものが張られている。徹夜明けの早朝に一度ポーチに立ってみたが、農閑期の畑のような空間が広がっており、公園にすればいいと何となく思った。そしてそこに小さな観覧車を建てて、ゆっくりと世界を俯瞰してやるのだ。
広場では子猫が活溌溌地に追いかけっこをしている。親猫があくびをする。ブランコに腰かけた少女がお気に入りの白猫を膝の上に乗せ無表情でなでている
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