名詩『夕焼け』の娘の感受性/夏美かをる
何故自ら受難者になる必要があるのか?
四度でも五度でも席を譲ればよいではないか!
そして今日は沢山の人を助けられてよかった、と
胸を張って夕焼けを見ればよいではないか!
満員電車の中
三度目押し出されてきたとしよりに
席を譲れなかった心優しき娘
美しい夕焼けも見ずに
下唇をキュッと噛んで
体をこわばらせていた娘の気持ちを
どうしても理解できなかった
あの時の私
教科書に差し込まれた文学作品はどれも
大人達によって冠された‘正しさ’をちらつかせ
私の読解力を値踏みする‘権威あるもの’だったし、
先生が畳みかけた解釈はあまりにもそつがなく
黒板の枠内にきちんと
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