眼の中にだけあるもの/みずうみ鳶
 
っと枯れ尽き
そして太陽と同じ眩しさをもって
空井戸の陽炎をゆらす
砂粒の黄金に焼け付く渇きをもらい
てのひらには妖精の踊る蜃気楼が
瞳の中に焚火を囲む踊り子たちが
いつにもまして消えていった短期記憶が
暗がりを教えて
手のひらのふるまいを伝える
逃げていったあの娘は
どうやら闇を食べすぎて
無と並んで走るやりかたを知ってしまったみたいだ
でも僕の言葉は届くようだ
それは紙に打たれたオルゴール盤の穴みたいなものだから
てさぐりでも
その穴のふれる驚きを瞳のゼンマイにかけて
心臓の鼓動に合わせて聞くことができる
その時打つ熱い血潮の心拍
そして紅潮した頬にふれた僕の手首の気圧が
きみの耳をふさぐ

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