That's fiction bunny/済谷川蛍
 
まで中空を見つめ続けるしかない。暗闇の中で俺の腹が蠕動している。
 ウサギよ、お前は一体何者なんだ。自然淘汰というやつか。毎年、毎年、必ず自殺者の数が変わらないのは、何か見えない力が働いているからなのか。そして、俺も、その力に殺されるのか。俺如きに、よくも熱心なやつだ。思えば、今まで多くの人間が死んだものだ。俺は怖くないぞ。俺よりもっと悲惨な死に方をするやつもいるからな。お前は俺と心中したいのだろう? 俺はお前のことを愛してやってもいいぜ。俺は誰にも愛されない人間だ。俺もお前を必要としているかもしれない。なあ、愛し合おうぜ。
 ヤツはぽぉんと窓に向かって飛んだ。俺は思わず手を伸ばした。だがヤツの小さなしっぽを軽くかすめて、俺の手は虚空を握った。ウサギは消えた。恐怖もいつの間にか消えていた。
 あの日から、夜気に脅かされることは無くなった。たまに、あのウサギのことを恋しく思うときがある。
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