トムソーヤー卿/ゴースト(無月野青馬)
その時だけ
何故かトムソーヤー卿の放つ禍々しきオーラが薄らいでいるように感じられた
この瞬間になら
どんな間抜けにでも暗殺してしまえそうだった
そんな不思議な光景を目撃したパーティーからしばらくの間
私は、トムソーヤー卿のこの特別な習性を考察してみた
けれど
実はトムソーヤー卿は
本当に
今、殺してくれ
今、死にたいと思っていたのかも知れないという結論に思い至ってしまって
唖然としつつ困惑した
けれども
驚きと同時に私は
トムソーヤー卿の中に失われていない少年性を感じて
微かにだが喜んだ
人は完全なる悪人にはなれないのだと思えて
とても安心していたのだ
ただ、それも
今ではもう
懐かしい
夏の思い出話に
なってしまっているのだけれど
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