砂漠の花/済谷川蛍
老人は青年に諭すように言った。
「中国の長城のように長い人生にも、終着点はある。生は死に対して一瞬である」
青年は答えた。
「死は生に対し、一瞬である。あまり一過性の死に囚われすぎないことです」
老人は嘆息するように首を振った。そして目を細め、語気を強めて声を震わせた。
「このけだるさを一掃し、冷たい地の底に沈下させる清浄の波をわしはずっと待ち続けておる」
老人は悲愴感で縮こまった小人のように声を弱めた。
「わしは、自分自身の夢の産物なのだ」
「……夢」
青年は最近、現実を受け止め、平凡に生きてみようと思った。生きるための死を、詩を求め、歩き始めたばかりだった
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