窓を拭くひと/服部 剛
 
高層ビルの屋上から 
ロープに吊り下げられた 
ゴンドラに乗り 
清掃員は10階の窓を拭く 

(決して、下を見てはならない) 

気紛れな北風に 
ゆさぶられ 
風の刃は頬に冷たい 

向かいのビルの珈琲店から 
遠い朧(おぼろ)な絵のように、目を細め 
僕は独り、問うている 

「生きる為に、窓を拭くのか? 
 窓を拭く為に、生きるのか?」 







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