老年/葉leaf
 
月日に月日が掛け算されて
人と人とが割り算されて
登りなのか降りなのか分からない階段を
一段ずつ 時には一段飛びで
川底に延々と流し続けた
枯葉は月から降ってきて
腐ることなくきらきらと石化していった
私はまなざす、そして目を伏せる
もはやまなざせないものたちへと血の温度を送る
白髪は奇跡のように増えたものだった
しわは私の感激のしるしのように思えた
時間はいつも踊り狂っていた
この夏の日 思い立ったように
私は人生を平定していく
社会に重い錠をかけていく
世界と激しい和解をする
虚無に終焉を宣告したいのだが
生え茂った虚無の野原で
とりあえずは歴史の諸力を
ひとつひとつ折鶴の中に閉じ込めていく
存在へと投げられた
いくつもの注釈からさらに
注釈への注釈へと
君の在り処を探ってゆく
衰えた君の表情を
私の表情で補い
ともに衰えることで
ともに補い合えることで
私はやっと君とひとつになれた
君よ
かつて君が無限だったのは
私が無限だったからだ
今、私は有限で君も有限
二人で此岸の梅樹となろう

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