猫を拾う/伊織
、自分でやります。」
くるりと背を向けるが
漂ってくるのは
コーヒーの香り
また終電で帰ると鍵は開いていた
フローリングにくるんと
フード付きのタオルを掛けた
丸い背中
起こさずに抱きかかえる自信がなかったので
布団を被せた
こうして数日
背中だけを見ながら過ごす
ときどき
酸味の強くなるコーヒー
ようやく休みの取れた日に目を覚ますと
テーブルに並んだコーヒーと目玉焼きとトースト
少し冷めている
ミルクの匂いがするタオルが一枚
セミダブルに
表を上にして転がっていた
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