夜に 夜に/木立 悟
指が鳥になり
ふたたび指になり
ふたたび鳥になる
そのくりかえしを
見つめている
眠る家々をまたぐ蟷螂
土にこぼれ 消える灯り
風が街に着せてゆく
街ではない街のかたち
流れの上の光と花
樹と樹と樹と樹を縛る蛇
ただひとりのための白
稲妻の名を数えている
骨の明るさ ふたつの径
押し花と池 花の足跡
歌えるものほど黙りこむ
音を失くした街の門
ささくれだった光が泳ぎ
右と左を平たく運ぶ
冬を冬にしまい忘れて
蒼は蒼の底に立つ
水に倒れた樹をわたり
衣の声はすぎてゆく
浪の路 石の路
まるい記
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