遠方から友/煙と工場
永劫の深淵を覗く
少年時代の自分を
背後から
突き落としたい衝動に
襲われて
気がつけば朝日で
目が覚める
用も無く
高層ビルの上空から
地面を眺めよう
すれば
黒蟻が蠢き
春を謳歌しているのが
見えるだろう
あの中には
多数の自己が
散乱している
あれは幼児の頃
それは小学生の頃
これは中学生の頃
そして高校生の頃
あるいは大学生の頃
いつのまにか
失ったそれらの欠片を
集めたくて
その人たちの
仲間に
なりたくて
フェンスを台にして
飛び込んだ
一瞬
背中を押した奴の顔が
見えた
少年時代の僕
が笑っている
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