人魚/
春日線香
夜明け前にはいつも
街路樹が一瞬だけ背伸びをする
夜のうちに出されたゴミ袋は
浅く水たまりに浸かって
少しの間まどろんでいる
生きていた時のこと
本当に言ってほしかったこと
使い古しの花瓶は砕けて
どの夢もただの思い過ごしとして
消えてしまうのだろう
閉じた目蓋の奥で
息をひそめて小さく歌う
朝が嫌いな人魚が帰っていく
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