カラカラ/ただのみきや
風に吹かれて空き缶が
ゆるい傾斜を上って行く
カンカラ転がり上っては
カラカラカラリと下りてくる
あの風が止んでしまえば
あとは 下りるだけ
底の底まで落ちぶれて
それも自然なことだろう
働けるという幸い
働かなければならないという辛さ
食べて行ける幸せ
食べて行くための戦い
陽気なお日様に頬を弄られ
固い道路に踵を削られながら
ドラッグストアの駐車場
虚ろな自分の顛末を見極めたくて
このまま行きつ戻りつなら
勝ち負け論で人生を割り切るのも良し
だが 車に引かれてペシャンコとか
誰かに拾われリサイクルボックスなら
偶然を装った運命の細い手を
こちらから握ってみるのも悪くはない
そうら 風が吹いて来た
笑えよ笑え呆気らかんと
転がれ転がれ素っ空漢と
戻る 編 削 Point(24)