挽歌/イナエ
いない素手で
蔓草をめくりあげたおろかさ
指は縞模様の先鋒に攻撃され激痛に動転した
治療と報復に立ち上がったわたしの目は
夏の陽射しを蔓草に遮られてじめじめした地面に留まる
風を避け雨を含んだ病葉を這う白いイモムシ
人間につけられた名さへ 人間に忘れられた蔓草の
ひっそり開く花
の触媒となり子どもの食料を得て
たがいの暮らしに力を貸し合い平和に暮らしていた小さな虫の
精一杯鳴らした警告を無視し
逃げることなど出来ない幼虫を
握りつぶしたわたしの行為
周りを飛ぶ蜂の声が聞こえる
たとえ嫌われているとしても
人間たちとは争いたくないんだ
蟻の餌となった幼児の追悼と
この地を立ち去る惜別の
挽歌は 聞かれたくないんだ
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