浄化あるいは楽観的な疾患/青土よし
 
電話を切って鞄にしまう。空がけぶっている。触って舐めて愛したせいで欠損した展望の死骸である。ここにあるどの不足が、あなたをして涙ぐましい暴力を振るわせしむのか。水に潜ってまで夢を見ようとは思わない、と頭の中で言いながら、胸に氷を押し当てる。37℃がそれを溶かす。希釈された真実が痛覚と結託する。やがて嫌悪感の成れの果てとしての体内に火を放つ。燃える火は赤い。涙は流されることなく蒸発する。4月を忘れる前に、あなたを愛しておくべきだった。
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