光あれ/竜門勇気
 

やりたいことは
できなかったね
ほしいものは
誰もくれなかったね

いい人生だ
こういうので
苦しいのが
当たり前になって

たのしいって
どんなことなのか忘れたよ

そんな君に朗報だ
屋上に登って
人差し指をたてて
世界に向かって
命令をするんだ

”極めて甲高く光を灯せ!”

夕闇を切り裂いて家々に明かりが灯る

”地蔵のように黙れ!”

光はしぼみ
やがて静かな窓に残る残像が
指先の沈黙と同化する

”光りあれ、当たり前のように人々の傍らにたて!”

地平線は怠惰なので
ぼんやりと重く輝きはじめる
そしたら指をしまっていい
世界を回す者の仕事は終わりだ

やりたいことは
誰かがやってくれてる
欲しかったものは
まだ手に入れてないだけ

世界が回るスピードに
僕らが合わせてやることはないんだ
スキップしながら非常階段へ急ごう

やりたいことも
欲しい物も
まだまだたくさん
思いつけるだろうから
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