いらない夜に/ホロウ・シカエルボク
 



この夜
この場所で
眠ろうと試みているのは
この俺によく似た
なにかであり
見たところ
そいつは
試みに
成功していない


外は小雨が降っていて
風が強い
一時間前には
ひとりの女が
大声で泣きながら
通り過ぎていった
たぶん
素面ではないだろう
知り合いでもないのに
そいつは
しばらく耳をすませていた
理由は判ってる
泣き声は
他人のような気がしない


試みを諦めて
デスクトップの電源を入れ
この詩を書いているのだ
文字列の中に
眠るヒントが
隠されているのかも
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