焼いて焼いてまだ焼くから/秋也
 
焼け野原
青空だけが突き抜けて
煙混じりに
兵士二人
「何もねえ」
「ああ」
「おい俺たち勝ったんだよな」
「何もねえから勝ったんだろ」
後者
タバコ
火を点け
燻らせる
二人で歩く
前者
勝者のくせに
負けっつらの
泣き顔で
歩く歩く
我ら誇り高き兵士なり
「灰皿みてえだ」
「お前、いい事言うな」
後者
煙草
深く吸い込み
大きな大きな灰皿へ
ぽいと
火は無数に燻ったまま
「何にもねえからな夜には星が綺麗だぞ」
「やっちまった」
「空だけはいつも綺麗に開放してやがるな」
前者
共作の灰皿に涙落とす
赤くはないが
すでに染まって焼けた大地へ
ポトリと無情の一滴
それでも歩く
兵士は
どこまでもどこへも行くから


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