十六夜と君/石川湯里
 
僕がここでこうして生きていることの証を
この世のあらゆる生命に臆することなく伝えたい
少なくとも近所のいきがっている連中だけは絶対に許せない
いつでも何人かでつるんで中身のない会話を垂れ流し
そうこうしているうちに日が暮れて
夜になって

深い悲しみから逃れようとすればするほど
潮騒だけ遠ざかって取り残されてぽつん
いっそのことカラオケに行ってしまえたらいいのに
できるだけ長く歌い続けられたらいいのに
喉がかれるかかれないかのぎりぎりのところまで
ここでこうして生きていることの証を
明日につなげたいあしたになったら

喉がひりひり痛むだろう
それでもかまわない今日と
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