ハツカネズミ/イナエ
 
かつて 人は 
真夜中に天井裏をばたばた走る音に目覚めても
ネズミだと知れば安心して眠った

 家で餅をついていたころ
 鏡餅を刻んで 部屋に広げた
 子どものおやつを作るために…
 だが
 生乾きのあられを見つけたネズミは
 肉色の尖った鼻をひくひく動かし
 丸い目であたりを警戒し
 一粒くわえて すばやく去る

人は福をもたらし 火事を予知する神(マウス)の
この仕業を 許しはしない
金網の罠を仕掛け 
捕らえた神を ブリキバケツで水攻めする

 閉じ込められたわずかなスペース
 脱出を試みて 手足を動かし
 網にぶつかり 金網をかじり
 空気を求めて
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