隣人計画 2/英水
一.
シンクロしている部屋に棲んでいる。
「今日は、耳を貸してくれよ」
ということなので、油に包んで投函しておく。
私は目を借りて、360°サラウンド。
帰ってくると
「炭酸のように、至るところで音が弾けている」
という。
「お前も、明日は耳で行けよ」
などという声が浮いている。
隣人との連絡は、共有している壁に声を流し込んでおく。
目で行く日には、覚悟がいる。
浮腫(ムク)んで眼窩にナカナカ収まらない陽(ヒ)さえある。
そんなときは、涼しい場所に置いておく。
角のない、白い部屋などがいい。
あるいは水槽で泳がせる。
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