五月とトカレフ/一尾
 
兆しばかりが高まっていく五月の

春という付箋を貼り付けておくには

些か暴力的な日差しを肌に感じているとき

わたしの柔い細胞がじりじりと焦げて

駄目になってる気がして

薄らと首筋に滲んだ汗も

暗い森に茂るプラタナスの樹液のように

べたついている気がして

いやに胸が詰まる

信号が赤でいっそ

他の色を知らないみたいに

動かないことに対して

驚くほどの無関心

でも昨日

他人が好きだと言ったものを

自分の気持ちのカーブに沿わせず

「いいね」って言って

適当に許してしまったことなどは

何度でも胃からもどして舐めるみたいに

反芻してる

あと二十台車が通って

まだ信号が赤だったら

足元のコンクリートに不自然に落ちている石に

トカレフっていう名前を付けて

何かを殺すための武器として

カバンに入れたい


わたしはあれ

きらいだな
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