【緑】こころ域 /るるりら
する。---
潮の匂いがするということは
いつもの場所から そう遠い場所ではない。
女たちが しゃがんで
草を刈っては籠にいれている。
夕飯にするのだろう。
この街には 大人の男は いない
乙女が 電車の車掌を務め、
その襟は 元安川の鷺のように 白く、
少年が 思映い心を隠している、
奥歯に力を入れ、電車につかまっている。
嗚呼 この橋は御幸橋。
御幸橋にさしかかる電車よ、
最新式電車を器用に操作する 美しい女性(ひと)よ、
面影が 裏返る電車
すべてのものが 影という影すら失った日よ、
車窓のひとつひとつ
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