食欲/夏美かをる
絶対的な漆黒に支配されながら
もう消えてしまいたい、と
泣き続けた夜
だけどそんな闇でさえ
萎え始める瞬間がある
私の意志とは関係なく
朝は必ずやって来るのだから―
地球が営みを辞めない限り
何万回でも 何億回でも
夜明け前
私はまっすぐキッチンに行って
白いままのパンを食べた
一枚、
二枚、
三枚、
四枚、
五枚…食べてもまだお腹が空いていた
六枚目に手を伸ばした時
ふと涙が止まった
七枚目を食べていたら
心が空っぽになった
八枚目を食べている途中で
泣いていた理由を忘れてしまった
胃袋が九枚目を要求した時
この食欲が
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