じこひてい/はなもとあお
 
じこひてい


もうそうは
ふたつのともだちの声で
たしかに言った
「おまえなんかいない」
「あなたはだれかであって“あなた”というひとはいない」って。


わたしはいるのに


匿名の顔のない街では
わたしは
だれかとだれかの集合体
”あなた“なんていない


声は、わたしに言った


いない
いない
そうしてわたしはわたしをなくした


声はいたのに
声だけが
いないわたしだった
声はいるひとの声だった




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