夏の閃光、記憶の抜け殻/まーつん
 
 一


 セミの抜け殻が立ち上がり
 自分を置き去りにした
 主を探し始める

 何も見えない目で
 広がらない翼で
 動かない足で

 命が生まれ変わる度に
 脱ぎ捨てられていく
 過去という名の衣

 それらは時に
 魂を宿して

 甘い樹液の枯れた
 晩夏の木々の幹の上
 微風に優しく揺さぶられ
 憑かれたかのように

 目を覚ます


 二


 空に走る閃光と
 街に流れた血の河と

 あれから六十七もの
 夏を重ねてなお
 セミ達の唄に
 受け継がれ
 唄われる

 原爆の記憶

 聞こえますか?
 焼
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