おとめ/壮佑
海藻の匂いが漂い
干し蛸がぶら下がる漁村の道を
おとめは エシエシ笑いながら歩く
焦げ茶色に焼けたうなじを
苦い潮風が打つ
塩をまぶしたような髪をほつらせ
おとめは よだれを拭きながら
ぼろを引きずって歩く
遠い昔の寄宿舎で
島から来た同級生に聞いた話
夜のラジオからは
ザ・ビートルズの曲が流れていた
教会で米粒を拾うエリナー・リグビー
(寂しい人々は何処から来るのだろう)
おとめの島に教会はなかったから
虚空蔵さんやお大師さんの摂待で振る舞う
お菓子を恵んでもらったのだろうか
おとめ 乙女? 「お」が付いた「とめ」
それとも音女か 音の眼か
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