頑張れオッサン!/HAL
ヶ月を費やしたはずだった
それに至るまで小さなボードに文字を書き気持ちを伝える訓練もしたはずだ
ましてや彼は右手が想うようにならないぼくは利き手ではない左手だった
それでも情けない心と眼から溢れてくる涙は止まらずそれを拭うこともできない
彼には二人の嫁いだ娘がいたそれは最初彼に取って娘に迷惑を掛けることだ
言葉にならないけれど親子だけに迷惑を掛けることもまた泣く位辛かったはずだ
ぼくはTVに向かって彼に喋りかけていた“オッサン、家族はオッサンの味方だと
俺に見舞いに来てくれたのはマンションの管理人と不動産屋だけだった
家族には迷惑ではないしその二人の娘がいちばんオッサン
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