自画像/アラガイs
驚きもしない
、中庭から羽ばたく音に耳を奪われる
素麻のキャンバスには西日が翳り
餌を求めに鴉が飛来して来たのだ
立て掛けた鏡の中で時間だけが立ち止まる
瞳の奥には一瞬の戦慄と震え
仄暗いアトリエの中で睨みつけた鏡は燃え盛り
ひとりの盲人が椅子に腰を掛けたまま炎につつまれていた。
朦朧と反転する光と影の描写
太郎は一日の大半を、いまだ消化しつくせぬ自分と向き合っていた 。
「絵の具とは永遠なる破壊を促す道具に他ならない 」 メラメラと燃え上がり発火する
この感情の極みこそが芸術の発端なのだと 。
おもむろにチューブから赤と青を捻り出す
太郎はそれを指先で
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